二日目は、瀬戸内の島々を一望しながらの日の出から。
時刻は6時後半。あたりは赤く染まり、明るくなってきたのだが一向に太陽は出てこない。
不思議に思っていると、日の出の時間が関東よりも遅いという事を聞き、ああそうか!と驚いた。考えてみれば当たり前なのだが、日本が東西南北に長かったという事をついつい忘れてしまっている。
寒い寒いと言いながら目の前の景色がとんでもなく綺麗で、何度もシャッターを切ってしまった。
ぼんやりと赤い空気の中に島々の形が見えて、隙間を船がゆく。
赤みが薄くなり段々と空が白んでくると、遠くの島の向こう側から太陽の一部が顔を出した。なんだかやけに丸い物が、ぬうっとそのまま現れたものだから大変不思議であった。
聞けば向こうは四国だそうで、その島陰に太陽がずっと隠れていて急に見えたのかもしれないと言う。
また、薄ぼんやりと空気が霞んでいたので太陽の光は出た瞬間拡散せず、その形のまま上がってきたのかもしれない。
詳しい事はまるで分からないが、とにかくすごく丸かったのだ。
ああ、丸い!
今回の目的は海霧というものを見る事だったが、この風景が見られただけでも十分過ぎるくらいだった。
朝が来て鳥たちも嬉しそう
朝日をたっぷりと浴びた後、忠海港からフェリーで大三島へと渡る。
お目当ての山は鷲ヶ頭山という山だ。「ワシが父さん」と誰もが一度は頭に思い浮かびそうなダジャレを胸に、いざ出港。
それにしても、船というのは何故こんなにウキウキするのだろう。テンションが上がって、船内や景色を撮りまくる。
そして、この海は本当に穏やかだ。
チャプチャプと波とも言えない水が揺れていて、のんびりした空気でいっぱいである。
あと、初日から感じていたのだが全く磯臭くない。気のせいかと思ったがやはりそうだ。海のど真ん中にいても匂いがしない。
地元の海はというと、まだ見えていない段階からぷーんと磯の香りが漂ってくる。
船内をウロウロしていると、新年も明けてすぐという事もあってかお正月のお飾りが付けてあった。
しめ縄とシダ、ミカンに松。赤い実は万両だろうか、とても鮮やかだ。色も綺麗でこういうのって何かいいなぁと思い、ついつい写真に撮ってしまう。
縁起良し 正月飾りと 突き抜ける青(字余り)
島に着いて登山口までの道すがら、柑橘の木が沢山植っていた。そりゃあもう沢山。きっとここはみかんの島だ。
さて今回は、安神山と鷲ヶ頭山と二つの山を縦走する。ルートは鎖場がある道と、自然研究路の二つだ。
我々は自然研究路へと進む。
しっかりと整備された道を行き、振り向くとさっきまでいた町と海が見えた。こんなに美しい海と山が町の近くにあることを本当に羨ましく思う。
途中から岩が山肌に目立つようになってきた。
途中の展望台のような所から。まだそんなに登ってきていないはずなのにこんなにも遠く見渡せる。
手前の岩に乗ろうかと思ったのだが、小心者なので怖くて断念した。
ただ、海を眺める人
安神山の山頂に到着。標高は266.8mとはいえ、景色は抜群だ。
上から見てみると島の形が分かって面白い。海からすぐに角度が上がり、山になっていて、のぺ〜っとした形ではないんだな。
あと、左下のウニョッとした形の場所が気になった。中は歩けるようになっているんだろうか?
山側に目をやると、鷲ヶ頭山の山頂はどうもあの鉄塔のあたりらしい。ここから見ると結構な距離がありそうで、二山くらい越えそうに見える。
本当に?と地図で確認してみるもやっぱりそうだった。
安神山から鷲ヶ頭山までの間には沢山の奇岩があり、その中の一つの烏帽子岩が見えてきた。
ここに向かって行く画こそクライマックスな気がするが、山頂はもっと先の鉄塔なのである。
近づいてみると面白い形をしている。上に乗っている岩は滑り落ちてきそうな気配だ。
岩好きの友人はヒョイとてっぺんまで登っていたが、私には無理だったので一段下の岩に腰掛けて記念撮影をした。
烏帽子岩でひとしきり遊んで、いよいよ鷲ヶ頭山の山頂に向かう事に。
見下ろすと、昨日の黒滝山同様、この時季にしては緑が多くて青々している。やっぱりここは暖かいんだなぁ。
今日は日が照って暑い。
昨日も晴れていたが風が強かったので冬らしさがまだあったのだが、これじゃあ、まるで春の陽気である。
もう一つの奇岩が近くなってきた。こちらはパキパキと直線的な印象。
どんどん登って振り返ると今まで登ってきた稜線が一望でき、さっきまでいた烏帽子岩も大分遠くなった。
コースタイム3時間弱の山にしてはなかなかにアップダウンがあるし、山頂直下は結構な急勾配だ。
あと、海はずっと見えていて、海だなぁ〜島だなぁと嬉しくなる。
急な坂を上がり切ると鉄塔が現れ、すぐに山頂だ。祝日ということもあってか山頂は何人かの登山者がおり、ワイワイと楽しい雰囲気だった。
鷲ヶ頭山、436mの山とは思えない充実した道のりの山である。もちろん山頂からの眺めもバッチリ。
帰り途中、看板に描いてあった「毛サイ」
言葉の組み合わせが面白くてニヤけてしまった。毛という文字の破壊力たるや。
こっちは、頭部だけはめ込み式になっていると思しきマンモスだ。もしくは鼻をブンブンしているのか?
いや…、一つは牙なのは百も承知なのだが…。
フィルムを2枚消費してでも、毛サイとこれは撮っておかねばと思ったのだ。
また、この山の植生を紹介する看板もあったのだがそちらの絵も味わい深く、作者の筆跡が見え隠れしていてとても良かった。
ああそうだ、最後に一つ言っておこう。
初めて来たこの瀬戸内という場所を、私はすごく好きになった。