年明け、どこの山に行こうかと思って地図を広げていると気軽に行けるであろう大野山が目に入った。
すっきりとした冬の晴れの日は、思いがけず気持ちの良い山行となった。
自身の丹沢登山と言えば、ほぼ渋沢か新松田駅からだがこの日は谷峨駅から出発だ。
山間ののどかな無人駅から少し歩いていくと、ひょっこりと雪をかぶった富士山が見えてきた。これは幸先がいい。
しばらくアスファルトの道をくねくね登って、蔦が絡まった木が現れた。これは緑のオバケだ。
鹿柵を通り過ぎた辺りから登山道が一変した。
背の高いススキが道の脇に大きな壁を作っており、不意に視界が開けた途端、枯れ草の草原になる。
時折冷たい風が吹いてきては、ザアーっと草が揺れて気分がいい。青空と枯れ草の色の二色で構成された景色はとても綺麗だった。
ここへ来る前には想像していなかった景色だったので、なんだか得した気分になってニヤニヤしていた。
枯れた植物に近寄ってみるとススキだけではない事が分かる。微妙に枯れていく色も違うから面白い。
ところで、この山には木彫りの何かが点在している。このフクロウもその一つ。
木フクロウ「……。」
無言のフクロウを通過後、のっぺりとした道に出た。どうやら山頂はもうすぐだ。
山頂からは、道すがら見えていた富士山がドカンと鎮座していた。塔ノ岳辺りから見るよりもはるかに大きくて迫力がある。
昔登った矢倉岳も同じような見え方だった。
冬なので緑は少ないがその分空気が澄んで遠くの山や海まで見え、気持ちがいい日だ。
標高は634mと低いが、なかなかに眺めが良い。秋にはこの山が広葉樹の紅葉と針葉樹の対比で色付き、一段と美しいのではなかろうか。
帰路では、これまた木彫りのスーパーサイヤ人(鬼ババ…?)と色を着けて貰えなかったのかもしれないうさぎが強烈に見送ってくれた。
「また来るがよい…」