8月もう終盤、沢靴を購入したのでそれを試す為にいつもの山へ行く事にした。
行き先に困れば、ここへ向かえば大丈夫という安心感がこの山にはある。人間に例えるなら穏やかで親しい友人といったところだろうか。
真夏の西丹沢に行く事はほとんどなく、どんな感じかと思っていたがとても暑い。日陰は多少涼しいとはいえ、沢沿い以外はムシムシとした気温だ。
ビジターセンターの周辺は涼を求めてやってきた人々で溢れかえっており、平日の人っ子一人いない風景に慣れている身としては、なんだか出だしから面食らってしまった。気を取り直して畦ヶ丸方面へ進んで行くと少しずつ人が減り、少し安心した。
だらだらと続いた梅雨の長雨のせいか地盤が相当緩み崩れたのだろう、地層がむき出しだ。流された沢山の倒木で道が様変わりしており、いつもの木橋も位置が変わっていた。
最初の堰堤を通過した付近に積み石があった。積んでいる時の楽しげな光景が見えてきて、とてもリズミカル。
それにしても西丹沢の水は澄んでいてきれいだ。思わず沢靴でジャブンと入る。
なんて気持ちがいいんだろう!
一人、興奮しながら沢の中を歩く。沢用の靴下も履いているのでジャブジャブと水の中を歩いてもへっちゃらだ。
昔、大きな水たまりにブランコで助走をつけて飛び込んだ時の高揚感に似ているな、と思いつつズンズンと歩いた。
沢からあがり歩いていると、岩の上に違和感が。見るとカエルが座っている。
手のひらに乗るくらいの中サイズだろうか。30cmほどの至近距離で顔を近づけても、ぴくりともしない。
しばらくカエルを見ているとおじさんがやってきた。カエルがいますよと話しかけると、「ああ、ここによくいる奴だよ〜」と教えてくれた。
そうか、この辺に住んでいるのか。畦ヶ丸には何度も来ているが、カエルには初めて会ったので嬉しかった。
カエルは接写で写真を撮った後、ビヨンと岩陰の方へと消えていった。
カエルに別れを告げ、いいスケッチポイントはないかとひたすら歩いた。進行方向だけにいい景色が広がっているとも限らない。
来た道を振り返ったり、しゃがんでみたりしながら良い場所を探す。
ザアザアとした水の音が絶え間なく耳に入ってくる。ただ歩いているだけでもいい気分だ。
近くに座るのに良さそうな岩を見つけたので、そこでスケッチをした。
夏の終わり、沢の感触をひとしきり楽しんで帰路についた。畦ヶ丸、次は冬に会おう。