先日、約三ヶ月ぶりに山に行ってきた。
向かった先は、大好きな西丹沢 畦ヶ丸。 好きな山には何回でも行きたくなるものだ。
畦ヶ丸はすっかり春の装い。柔らかな色をした木々たちが、とても優しかった。
10時前、少し遅めにビジターセンターを出発した。
ゆらゆらと水面は揺れ、清々しい沢沿いには芽吹いたばかりの新緑が。そんな気持ちの良い道を行く。
ザーザーと流れ落ちる水の音がなんとも心地よくて、ずっと聴いていたくなってしまう。
そしていつもこの場所で写真を撮っている気がする…。
間から見える向こうの山肌には、ちらりと桜が。まさか山で桜を見られるなんて思っていなかったので、とても嬉しかった。
その山を背に歩き、下棚に到着。
サーッと水が落ちて行く。
周囲に新緑があるからか、1月に訪れた時よりもやわらかな印象だった。
下棚から本棚へ行く途中、所々にツツジが咲いていた。淡い黄緑に桃色。なんて可愛らしい色合いなんだろう。
木々の葉はまだ若い芽のせいか、沢に落ちる影は淡く明るい。
そういえば、早春には一度訪れていたけれど4月半ばには初めて来たのだ。
そして5月になれば緑は一層その濃さを増し、沢からの風を受けてザワザワと揺れるのだろう…とそんな事を想像したら、歩きながらにやけてしまった。
見上げればまだ緑は薄く、隙間から光が差し込んできます。木漏れ日は沢に落ち、反射して光る。
その上を風がサーッと吹き抜けて行った。
耳を澄ましていると、どこからともなく鳥の声が聞こえてくる。これは何の鳥だろう?と想像を膨らませるのもまた楽しいのだ。
この日の山行は珍しく同行者あり。
躍動する水や、穏やかに揺れる木々、それらから何かを感じとり切り、撮り終えた写真を見ると新たな視点に気づかされる。
何枚かの写真やスケッチ、自らが感じた記憶やイメージを一旦持ち帰り、全て混ぜる。
混ぜてこねて、ボヤンと出てきたものが絵なのである。
てくてくと歩きながら、この畦ヶ丸からどんな絵がかけるのか…とぼんやりと考えていた。
進む先には本棚が待っている。
それにしても、この水の青さよ。
毎回この山に来て思うのは、水の美しさ。決して派手な深い青ではないけれど、曇っていても晴れていても、その時々の水の色がある。
少し経つと、途端にそれが見たくなり毎回足を運んでしまうのだ。
本棚までの道すがら、「あっ!」と声をあげてしまった。
9月に来た時に見つけた写真中央部の尖った石がまだあったのだ。
その時、上空の木々は茂り、わずかな隙間からもれた光がまるでスポットライトのようだった。
下の写真がその時の様子。
ほぼ同じ位置から撮ったものだが、季節や光と影によってこんなにも見え方が変化するのかと驚き、スポットライトを浴びた石はなんだか誇らしげに見えた。
また会いにくるよと思いながら先に進む。
本棚の手前には、象徴的なケルンが積んであった。
写真だとあまりスケールが伝わらないのが残念ですが、水はゴウゴウとしぶきをあげて落ち、流れていく。
最前線まで近付いたのだが、やっぱり寒い。
ちょうど、滝の上部に光が当たって輝いていた。
「こんにちは。ケルンです。」
「私もケルンです。」
ケルンの擬人化はさておき…
本棚の反対側にある滝にもちょろちょろと水が流れていた。
そして、振り返ると本棚。
ダバーーーー!
本棚を堪能しすぎて、おなかがすいたので休憩スペースまで戻ってお昼ご飯を食べることに。
ゴロゴロした石を飛び越えて…
今回のお昼ご飯は白だし肉うどんだ。
普段日帰りの山行では、作ってもラーメンくらいなので、なんと豪華なお昼だろうか。
さすがちゃんとした豚バラはは違う。
美味しくて、ペロリと完食してしまった。
お腹も満たされ、少し休憩してからビジターセンターへ。
午前中とは違って、午後の光は少し黄色い。それを受ける葉の色も温かみのある色に見えた。
岩にぶつかった水は、シュワシュワと流れて行く。
山の輪郭はまだ淡くふんわりとしていて、向こうの山も霞んでいる。少し雲が出てきたが、15時を過ぎても晴れていた。
広葉樹の新芽の色は、それぞれ異なる色なのか。種によってこんなにも違いが出るなんて、離れて見ないとわからないものだ。
淡い黄緑、少し透けた黄色、先端だけ赤みを帯びた黄緑。そして、桜色。
まだそれぞれの色は強くなく、一定の淡さを保って共存していた。
そして、なんていいものを見れたんだろう!なんだかいい絵が描けそうだ…と思ったのである。
穏やかな春の日に。